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2015年 3月 1日更新 |
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第 15 章 | 白 木 蓮 | 平成22〜26年作品 |
新 年 |
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初夢の我飛び跳ねてゐたりけり | 見えざりしものを見つめて年明くる |
復興のことにうれしき賀状かな | |
は る |
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早春の一歩を刻む万歩計 | 初蝶も乗客となり縄電車 |
デッサンのなき点描画草萌ゆる | 風までも菜の花色に染まりけり |
目印はあの家のあの白木蓮 | 花冷えや人の歩みに沿ふてみる |
新緑の色塗り替へて雨上る | かたすみのいのちまばゆし花すみれ |
心奥を洗ひ流して新樹光 | かげろふの中より亀のあらはるる |
いびつなる地球のかたちしゃぼん玉 | |
な つ |
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牡丹散りて一期一会の風立ちぬ | 花みかんにはかにかはる午後の風 |
百合の花わづかに風の動きけり | 風止みてより鷺草の舞ひ立ちぬ |
梅ジャムを煮る雨脚を太らせて | 雨疲れしてみちのべの梅雨の蝶 |
額の花昨日の迷ひ降りこぼす | 貝殻を持たぬばかりになめくぢり |
掌にメルヘンひとつ天道虫 | 炎帝の目をおほひたき暑さかな |
思ひ出やくるくるまはる夏帽子 | この町に残る原っぱ夏帽子 |
あ き |
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朝顔の紺の一滴空染むる | 朝顔の紺色空へ返しけり |
新涼や生きてゐること生きること | 増ゆるほどさみしくなりぬ赤まんま |
虫食ひの虫は追はざり草紅葉 | 人の世に迷ひ込みたる牡鹿かな |
先頭もしんがりもなき花野かな | 天命を信じて紫蘇のこぼれ種 |
秋日濃しまなざし深き地蔵さま | 銀漢の尾にあそびゐる仏師かな |
天上の新酒の味を問ふてみる | 天空を引き寄するごと烏瓜 |
日のかけらすくひて秋を惜しみけり | 長き夜のよもやま話きりもなし |
初紅葉どこかに残るうすみどり | |
ふ ゆ |
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風花の風を残して消えにけり | 帰り花いつもどこかに富士の山 |
穏やかな一日いただくお茶の花 | 踏むべきか踏まざるべきか霜柱 |
生きるとは生きなほすこと冬木の芽 | 冬眠のくちなは起こしてはならぬ |
細胞のみな尖りたる余寒かな | 如月の空おほひたるもの多し |
御嶽も阿蘇も眠らず冬に入る | |
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