2009年11月 1日更新

慢性腎炎と多発性骨髄腫の治療を受けながら、パソコンのインストラクター・週3日のアルバイト・自宅にてデータベースやホームページ作成 、パソコン関連のテキスト執筆…などの仕事を続けていましたが、病状が進行し、平成19年8月から闘病生活に入りました。
19年10月から抗癌剤による治療開始。約1年間、骨痛のために眠れない日々が続きました。入退院を繰り返し、化学療法と輸血を継続。腎臓に影響するタイプの骨髄腫(IgD型)のために腎不全となり、20年4月から血液透析が導入されました。
20年10月頃から治療の効果が出始め、貧血が改善され骨痛も和らいできました。昨年還暦を迎えたこともあり、改めて生きることの大切さを噛みしめています。味覚も嗅覚も麻痺したままですが、体力回復に努めています。
治療が長引くと共に合併症や故障が次々と生じています。これらの治療に伴う新たな副作用も。歯科治療も加わって病院へ通勤しているような日々が続いています。

平成14〜21年の作品を漸く整理。新年・春・夏・秋・冬各10句ずつ自選しました。寡作は相変わらずですが、俳句に向き合う時間が徐々に戻ってきています。じっくりと自分を見つめ、句作を続けていくつもりです。


第 14 章 合歓の花 平成14〜21年作品

新 年

初富士のむかふに繋ぐ夢いくつ 初夢の三猿しかと語りけり
期することあり鶏旦の仄明り 山海のかをりほどよき雑煮かな
愛犬の声も混じりて初電話 景品の七草籠を貰ひけり
初暦白き華甲へ旅立てり 息災の祈りあふるる初便り
二日早透析室に生かさるる 緑濃し友の育てし若菜かな

は る

梅二月いとやはらかき筆づかひ かたかごのうれしきときもうつむきて
まつさをな空をこぼして糸桜 花すみれ風の流れにさからはず
東雲の空ふるはせて初桜 かろらかにしづはたやまのはつざくら
大御所の懐深し山桜 山桜海より人の現るる
カタカナの名を確かめし花の種 春の海まあるき地球とこしなへ

な つ

ひるがほのふたつがさみしひとつより 大いなる影したがへしあめんぼう
蛍火やかつて瑞穂と呼びし国 牡丹の白の極みの白き影
合歓の花うつつにありて夢十夜 思ひとや蛍袋のふくらめり
二冊目の透析日誌夏に入る 青田風透析室に吹き入れよ
渚まで全速力の素足かな きつぱりと病名告ぐる日焼医師

あ き

一つ枝に白粉花の紅と白 死は生の一部なりけり蛍草
爽やかに新訳「星の王子様」 細胞にいのち吹き込む新豆腐
舶来の朝顔といふ碧さかな 朝顔の紺の一滴空染むる
われもまた銀漢の尾にまぎれたき につぽんの行方見つめる赤とんぼ
鉦叩宇宙の鼓動刻みをり 冷まじや癌細胞を叩く音

ふ ゆ

落葉して宇宙の中のひとりかな 銀色の中の黄金冬木の芽
霜の声又三郎を眠らせて 足裏に戻りし力霜柱
水鳥の高層ビルを揺らしをり 水紋のどこか揺らぎて浮寝鳥
冬晴れの匂ひ持ち来る見舞客 病室の空小さかり冬茜
地方紙に包まれ届く根深葱 笹鳴きだとて一日にして成らず