2001年11月 1日更新

 

 

夕やけ小やけの 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か


 

来てすぐに帰るふるさと冬茜

9月11日、アメリカで起きた同時多発テロ事件は世界中に大きな衝撃を与えました。ハイジャックされた航空機がニューヨークの貿易ビルを撃破し、6000人を超える人がまだ行方不明になっています。その後、アメリカとイギリスはアフガンやタリバンへの報復のための空爆を開始しました。
10月に入って、アメリカ国内では炭疽菌(たんそきん)の被害が広がり、不穏な動きを見せています。生物兵器の可能性もあり、バイオテロ事件の様相を帯びてきたようです。
日本では、米軍などの軍事行動を支援するテロ対策特別措置法が可決されました。平和ボケと言われても、アフガン難民の受け入れや、医療援助などの方法で支援することもできるのではないかと思うのですが。報復という愚かな行為を回避させることが日本の役割のような気がします。
日本でも狂牛病の問題が起きました。本来草食動物である牛に、肉骨粉を混ぜた飼料を与えたことが原因と考えられ、病原体であるプリオンという蛋白質が人間にも感染すると言われています。人間の都合で、いわば共食いをさせられた牛たちが哀しい。自然の摂理に逆らった帰結ではないでしょうか。
21世紀最初の年は暗い事件ばかり続きました。そんな中で明るいニュースも。昨年の白川英樹筑波大学名誉教授に続いて野依良治(のよりりょうじ)名古屋大学教授がノーベル化学賞を受賞しました。また、アメリカ大リーグでのイチロー選手の活躍もありました。
今回は平成7年の作品をご紹介いたします。


平成7年は戦後50年目の年。激動の1年となりました。
1月17日未明に起きた阪神淡路大地震は死者6000人を超える(12月末日現在)大災害となりました。また、3月20日の地下鉄サリン事件をきっかけに表面化したオウム真理教団の未曾有の犯罪は、仏の核実験と共に世界中を震撼とさせました。度重なる金融不祥事と不安、深刻化する小中学生のいじめ等々、「震」え続けた1年でした。
体調も回復し、4月から図書館(土・日)、9月からワープロ講師(週4日、夜間2時間)の仕事に就きました。
夏は酷暑、冬は厳冬、水不足が続きました。

第 8 章 石蕗の花 平成7年作品

は る
ポストより返つてきたる春の音 初蝶ものぞいてゐたり朝の市
躓きてまぶしき出会ひ蕗の薹 おほかたはふつうのくらし花粉症
春ゆふべふいに幼名呼ばれをり のら猫もペツトボトルも春おぼろ
つばくらめ犬の目線の高さかな 小説はハッピーエンド鳥帰る
な つ
図書館に雨の匂へり柿若葉 薫風や三つ先まで青信号
既視感を母と分け合ふ花みかん はや昼の色に染まりぬ新樹光
やまぼふし夜ごろの雨をふりこぼし 教会に臨時の出口つばめの子
迷ひ道やうやく抜けて青田風 楽長は山鳩らしき蝉時雨
あ き
群がりて習ひて慣れて稲雀 表札の二つある家秋桜
鉦叩聴かむとすれば応へをり  
ふ ゆ
さきがけしことを信じて返り花 通り抜けできぬ小径の帰り花
銀杏散るどこかに残るうすみどり 蓮枯れて思ひのままに曲がりをり
裏山の素顔のままに眠りをり 風花を遊ばせてゐる雲見えず
お日様をいつぱい詰めて雪見舞 行間にこの日溜りを雪見舞
寒林を来て渾身に生ることば 忘れたきこともいくつか日記果つ