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2001年 8月20日更新 |
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第 7 章 |
秋 桜 | 平成5〜6年作品 |
平成5年 | |
般若にも夜叉にもならず春の風邪 | 追伸の一行にあるあたたかさ |
車椅子の少女に触れし秋の蝶 | めずらしき鳥に会ひたる野分あと |
蓑虫に揺れざる不安ありにけり | 水たまり消えし路地裏冬に入る |
ワープロの機嫌よろしき冬日和 | 淡々と母の一日石蕗の花 |
平成6年 | |
停車位置わづかに逸れて駅四温 | 薄墨の空ふるはせて初桜 |
人に逢ふこと煩はし桜桃忌 | ねぢ花のおのれが茎を上りきる |
この道を行くしかないね道をしへ | ヘツドホンより音洩るる暑さかな |
夏見舞小さな旅の始まりぬ | ワープロの音軽やかに今朝の秋 |
コスモスのわづかな風も見逃さず | コスモスの夢もうつつも風の中 |
好まざる風にも揺れて秋桜 | 来年の約束ありや紫蘇は実に |
昨日より風に近づく草の絮 | 今日からは風になりきる草の絮 |
義理を欠くことより始む冬支度 | 堂々と一本葱の折れにけり |
雪女の掌中にある明日かな | マスクしてこんなに話すこと多し |
九円の重さを乗せて雪見舞 | 追ひかけて追ひかけられて去年今年 |