2001年 8月20日更新

団欒の 遠くに生きて 秋桜

 

夏負けて紙一枚の重さかな

残暑お見舞い申し上げます。
酷暑という言葉がぴったりの夏となりました。今年もエアコンなしで通し、私もパソコンもすっかり夏バテをしてしまいました。そのような訳で、少し遅れての更新となりました。暦の上では秋ですが、暑さはまだまだ続きそうです。蝉時雨と虫時雨が入り混じり、生命のうねりのように聞こえます。
朝日俳壇(全国版)への入選句を中心に、平成5年と6年の作品をご紹介いたします。


平成5年は、春以来雨が多く記録的な冷夏となりました。大凶作。米不足、米の自由化問題で侃侃諤諤。
7月、父の七回忌法要。8月は帯状疱疹治療のため休養。6ヶ月ほど後遺症の肋間神経痛に悩まされました。
翌年平成6年の夏は、梅雨らしい梅雨もなく、連日35度前後まで気温が上昇。40度を超える日もあり、日本各地で記録塗り替え。酷暑と渇水の異常気象が続きました。異変は政治にも。1年間に首相が3人も交代。1ドル90円台に。10月、大江健三郎氏ノーベル文学賞受賞。
平成5年9月から朝日俳壇(全国版)への投句を始めました。
   
     車椅子の少女に触れし秋の蝶 (飴山實選)
     九円の重さを乗せて雪見舞(川崎展宏選)
     ねぢ花のおのれが茎を上りきる(飴山實選)

第 7 章

秋 桜 平成5〜6年作品

平成5年
般若にも夜叉にもならず春の風邪 追伸の一行にあるあたたかさ
車椅子の少女に触れし秋の蝶 めずらしき鳥に会ひたる野分あと
蓑虫に揺れざる不安ありにけり 水たまり消えし路地裏冬に入る
ワープロの機嫌よろしき冬日和 淡々と母の一日石蕗の花
平成6年
停車位置わづかに逸れて駅四温 薄墨の空ふるはせて初桜
人に逢ふこと煩はし桜桃忌 ねぢ花のおのれが茎を上りきる
この道を行くしかないね道をしへ ヘツドホンより音洩るる暑さかな
夏見舞小さな旅の始まりぬ ワープロの音軽やかに今朝の秋
コスモスのわづかな風も見逃さず コスモスの夢もうつつも風の中
好まざる風にも揺れて秋桜 来年の約束ありや紫蘇は実に
昨日より風に近づく草の絮 今日からは風になりきる草の絮
義理を欠くことより始む冬支度 堂々と一本葱の折れにけり
雪女の掌中にある明日かな マスクしてこんなに話すこと多し
九円の重さを乗せて雪見舞 追ひかけて追ひかけられて去年今年