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2001年 4月 1日更新 |
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第 5 章 |
たんぽぽ |
平成元年作品 |
新 年 | |
添書きの行間を読む賀状かな | |
は る | |
食制限少しゆるめて寒明くる | 白木蓮までの目測あやまてり |
つくし摘む視野のどこかに富士の山 | 一円の重さを足して花便り |
たんぽぽのぽつんとここも風の道 | |
な つ | |
薫風を少し入れたき名画館 | 麦秋を来てルノアールの絵に向ふ |
師の句集一気に読みて青嵐 | 芍薬や負けず嫌ひは母ゆづり |
花柄のリボンまぶしき街薄暑 | 香水の香にまぎれたる自己主張 |
香水の適量といふ思ひやり | くちなしの香に弾かれて雨やどり |
色あせし昨夜の一句明易し | のど飴を買ひ足す旅の冷房車 |
相づちを打つ母のゐて日々草 | パラソルをたたみて無口きはまれり |
あ き | |
静岡の水の美さよ今朝の秋 | 草の絮風の訪ひかけ待ちてをり |
花野来てよりの無口となりにけり | 地に落ちて蓑虫の迷ひ始まりぬ |
不揃ひもありてうれしき青みかん | 電話にも追伸ありて秋の夜 |
紅葉山より速達の届きけり | また一つ田を埋め立てし神の留守 |
ふ ゆ | |
北側の席を選びて冬の海 | 北側の枝にもありぬ冬木の芽 |
長電話切るきつかけのくさめかな | |