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2001年 1月 1日更新 |
頌 春 |
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2001年 |
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お健やかに新世紀をお迎えのことと存じます |
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第 4 章 |
初 花 |
昭和63年作品 |
新 年 | |
うす味の暮らしに慣れて切山椒 | 鉢植ゑの菜を足し七種粥とせり |
は る | |
覚め際の山より霞立ちにけり | 席一つゆづりゆづられ春の旅 |
春愁のきつかけとなる花ことば | 東京の初花といふ白さかな |
一行にはぐれてすみれ草に逢ふ | 伝言版消えぬ一行春寒し |
こんなにも小さないのち花の種 | 花大根用件のみの母の文 |
夫も子もなき身に木の芽つはりかな | うたた寝の夢のあとさき藤の昼 |
な つ | |
おとなしき子が見つけたる燕の子 | 鷺草や食養生など忘れたき |
明と暗重なるところ青葉闇 | 病葉の光の束に呪縛さる |
虫干しや母に旧姓ある不思議 | 本歌取りなる一首あり凌霄花 |
冷房の死角を探す目に出会ふ | 信じたきものの一つに韮の花 |
箒木や故里の客となりゐたり | 失せしもの失せたるままに夏終る |
あ き | |
朝刊のインキの匂ひ秋涼し | ふるさとの花野の匂ひ持ち帰る |
スケッチのコスモス届く手術後 | 沙汰なくて健やかなりし鰯雲 |
ふ ゆ | |
また一つ見合を躱し冬構 | 気働きしすぎし夜の葛湯かな |
訪ふ人はこばまず母の冬籠り | 着ぶくれて何か忘れし心地かな |
白息の重なり合ひて死のはなし | エレベーター一気に降りて冬の街 |
一葉忌夜来の風の吹き止まず | 鯛焼きの尾つぽより食ぶ聞き上手 |
山茶花やかつては父を訪ひし道 | 来てすぐに帰るふるさと冬茜 |