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2000年11月11日更新 |
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第 3 章 |
花みかん |
昭和62年作品 |
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新 年 |
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| 紅絹で拭く塗椀ひとつ淑気かな | 福寿草にほどよき陽射しありにけり |
| 忘れゐし我と向き合ふ初鏡 | 初夢のひときはかろき覚めごこち |
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は る |
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| 三寒の四温に山のうすねむり | 病む父に戻りしことば梅一輪 |
| 寂しさといふ浅春の水たまり | 初蝶来臥す父にまづ告げにけり |
| れんげうの影も黄色と思ふほど | 床上げの膳に木の芽和を少し |
| 仏滅の明日は大安鳥帰る | 受話器置きてより春愁の始まれり |
| 朧夜や祖父の使ひし煙草盆 | 目かくしをされて艶めく雛納め |
| さみしさに慣れ春蘭のうすみどり | |
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な つ |
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| 昼時の茶摘女に茶を入れにけり | 花みかん光まみれの少女たち |
| 芍薬や女の意地の美しき | 坂道の中ほどにゐて朴散華 |
| 風止みてよりひなげしの揺れとなり | ビルの窓より早乙女に声かくる |
| また一つあきらめし夢水中花 | 家族欄はいつも空白沙羅の花 |
| 浅学を見られてしまふ曝書かな | 夏負けて母ゆづりなる人嫌ひ |
| ポケットのベルが鳴りゐる日焼記者 | 夏帽子父の冠りしままなりし |
| 月見草二階に残す薄明り | |
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あ き |
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| 銀漢の尾にまぎれたる父の星 | 朝顔のおのれがつるを捕へをり |
| 鳳仙花はじけて旅の始まりぬ | 故里を大切に渡る草の絮 |
| 絵はがきのみな完璧なる秋の空 | 秋の野を来し無口とは気づかざり |
| 秋日濃し父の匂ひの衣をたたむ | |
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ふ ゆ |
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| マフラーをして哀しさを捨てにゆく | 真白なマスク一癖隠しけり |
| 気ふさぎの一日真白き毛糸編む | 寒紅の思ひがけなき人に逢ふ |
| 霜焼けの手より温もり貰ひけり | ブティックの裏に白菜干されをり |
| そつとしてをくもいたはり帰り花 |
寒昴小さきことにこだはらず |