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2000年 8月11日更新 |
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第 2 章 |
花すみれ |
昭和61年作品 |
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新 年 |
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| 息災とまず書き留めて初日記 | ちょっと良い話持ち寄り女正月 |
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は る |
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| 人に逢ふための装ひシクラメン | 花大根素顔のままで人に逢ふ |
| 春風に流るる髪の素直なり | 生きるとは祈りにも似て花すみれ |
| 摘み草の野の真中に束ね役 | 初蝶来ことば探しは明日にせん |
| ほどほどの程が難し木の芽和 | 二の腕を見せて物干す初つばめ |
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な つ |
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| 二つ三つ摘みて事足る茗荷の子 | 朝採りといふ甘藍の重さかな |
| 庭石菖揺れては生るる風の道 | 青富士の襞の増えたる五月晴 |
| 絵はがきを横書きにして聖五月 | しつかりと目測をしてメロン切る |
| 掌に掬えば静かなる泉 | 水打つて石に静脈あるごとし |
| 従順にして筋通す水中花 | 消ゆるとき風のかたちの遠花火 |
| 人の世の折り目正しき薄衣 | サングラス美しき嘘すらと出る |
| 絵日傘に気弱を隠すこともあり | 香水を変へてためらひ深くせり |
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あ き |
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| 棉の実のはじける前の重さかな | 秋の虹人に告げれば消ゆるかも |
| コスモスの影遊ばせてなまこ壁 | 舌先にはじめやさしき新生姜 |
| うそ寒き夜のまちがひ電話かな | のびのびと皀角子の莢曲がりをり |
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ふ ゆ |
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| 誉められもせず枇杷の花満開に | 雑炊のひとりの糧の嘘めきて |
| 大家族生垣にまで蒲団干 | 冬蝶や話題つしか旅となり |